「点の記」長次郎谷と愛しの剱

【2023年5月2日(火)】

今年は残雪期の剱岳を登頂するために、冬期間、座頭石でのアイトレや厳冬期の宿泊訓練を行ってきた。
一瞬の油断が死に直結する領域に行くのだから、決して甘い気持ちで挑める山ではない。(現に今回のGW期間中も、滑落で亡くなった人がいた。)
今までの山行とは一味違うピリッとした緊張感を持って出発した。

【日 程】

5/2(火) アプローチ 弘前5:00発~小坂~長野県大谷原 理窓山荘17:00着 (泊)
5/3(水) 扇沢駅6:30~室堂駅~雷鳥沢~別山乗越~劔沢キャンプ場 (泊)
5/4(木) T・S 5:00~長次郎谷出合~北方稜線~剱岳~平蔵のコル~平蔵谷出合~劔沢キャンプ場 (泊)
5/5(金) T・S 6:30~別山乗越~剱御前ピストン~雷鳥荘~室堂駅~扇沢駅12:30~理窓山荘 (泊)
5/6(土) 理窓山荘6:00~小坂~弘前16:40

【2023年5月3日(水)】

朝一の予約にもかかわらず扇沢駅の無料駐車場はすでに満車。有料は辛うじて空いていたが、一体いくらかかるやら・・・背に腹は代えられないのでここに駐車することに。

GW中の立山黒部アルペンルートは、チケットを予約しないと厳しい。当日券売り場には長蛇の列が・・・。私たちはチケットGET済みなのでサクサクとバス乗り場へ。

いざ、劔に向けて出発だ~!

ワクワク感いっぱいの3人。(たぶん)
旅先の恥は、かき捨て

8:30 室堂到着。ターミナルの外は青空が。

観光客も多く、コロナ前の賑わいに戻りつつあるかな。

玉殿の湧水は、まだ出ていない。
青と白のコントラスト。最高のお天気!

荷物は重いが心は軽い。これもお天気のお陰だね~。

9:20 遠くに見えるは、雷鳥沢キャンプ場。テントの数がもの凄い。
雷鳥沢を登って来た。結構な急斜面。しかも地味に長い。

12:05 別山乗越まで来た。劔沢まであと一息。それにしても、荷物が重っ・・・・。

12:50 ベースの劔沢に到着。今日と明日、お世話になるお宿の設営。

剱岳が正面に見える場所を陣取る。
今日は、他に10数張くらいでしょうか。

それにしても、この天気~。テンション爆上がり!

剱岳が歓迎?してくれた。写真では、伝えきれませんが、何回見ても惚れ惚れする眺めです。明日は、あの頂へ

アイゼンの音だけが響く静寂な朝

【2023年5月4日(木)】

5:00 B・Cを出発する。朝日が山を照らし出す。
後ろにそびえ立つ山は鹿島槍か。柔らかな日差しが眩しい

他のパーティーも劔沢をベースにそれぞれ目的の取り付きに向け出発した。

私たちは目標4:30出発だったが、30分遅れで出発した。早いパーティーは3:30頃には出たようだ。

早朝出発がなぜ必要なのか、後にわかることになる。

人気の源次郎尾根。この日は、5パーティーがチャレンジ。

この人達の上にも登ってるパーティーがいた。

誰かが滑落したら、後続が巻き込まれる危険性が・・・。他パーティーが前にいる時は、ちょっと怖い。

長次郎谷出合に着いたのは5:35。小休止をし、直登しながら徐々に高度を上げた。振り返ると高度感と谷の大きさに圧倒されそうだ。朝のうちは、アイゼンが効いて安心感がある。長次郎谷の最大斜度は40度~45度くらい。その斜度をほぼ直登した。太ももとふくろはぎがやばい。

左に見えるは源次郎。
右に見えるは八ッ峰。2パーティーくらい登っていた。

憧れの尾根に両側を挟まれて、ひたすら登る

正面に熊の岩が見えて来た。

アイゼンが効いてるとはいえ、バランスを崩したら終わりだ。続く緊張感がたまらない。

熊の岩の左俣を通過中。ここから一気に斜度がきつくなる。

休憩中にソフトボール大の氷の塊が落ちて来た。正さんの一声があったので、飛んで来るのが見えた。危なかった~。

9:20 北方稜線に出た。360度の山並みが美しすぎる。

本峰まであと少し。ここまでノーザイルで登って来たが、岩と雪のミックスで
しかもグサグサの雪だったので、フィックスで通過することに。

安定のビレイヤー正さん
クォークの使い心地に、ご満悦の神
アイゼン経験少ないはずなのに、身体能力でカバー出来てしまう深山さん
リードで支点を作ってくれた頼もしいリーダー八ッ橋さん

11:20 ついに山頂に到着!遠くは富士山まで見えた。山頂では島根から来たパーティーに写真をとってもらった。彼らは源次郎から登って来たそう。ここに立った誰もが笑顔で、お互いの健闘を称えていた。私達も握手を交わし登頂を喜んだ。条件が良かったのも幸いだったが、目標に向かって訓練もしたからこそ、ここに立つことが出来たんだと改めて思った。

残雪期の剱岳は、どこか次元の違う人が行く場所で、そんな危険な所に行くなど夢にも思っていなかった私が、本気で登攀の技術を身につけたいと思うようになったのは、リーダーの八ッ橋さんのお陰だ。

毎回、ロープワーク初心者に戻ってしまう私に、根気強く何度も何度も最初から教えてくれ普通だったら、何年たっても進歩しなきゃ、いい加減嫌気がさしますよね。それなのに毎週、土曜日、秋田から教えにやって来る。

ちょっとは、上達しなきゃ申し訳ないなぁ・・という気持ちになって、本気で覚える努力をしたのが2年くらい前だろうか・・。いつの間にか、すっかりクライミングが楽しくなってしまった。(八ッ橋戦法恐るべし。)彼には指導者の才能がある。

カニのヨコバイ。昨年、滑落死亡事故があったので、
赤ペンキの目印が増えていた。
長梯子を下る

カニのヨコバイを下り切った先に平蔵のコルがある。アイゼンを引っかけないないよう慎重に下る。雪が腐ってアイゼンの効きが悪い。中腹まで下った時だったろうか、前方100mほど先の源次郎尾根から、ガランゴロンと大きな岩が落ちていった。ホントに最後まで気が抜けない山だ。

平蔵谷出合 13:45 劔沢ベースキャンプ 15:50着

平蔵の出合から劔沢キャンプ場までは、長~い登りが待ち受けていた。(約2時間)

劔をバックにまた記念撮影。

【2023年5月5日(金)】

最終日は、6:25に出発。7:20 別山乗越到着。
立山三山を諦めたので、剣御前を空身でピストンした。10:40 室堂到着。11:15発のトロリーバスに乗車し扇沢駅に着いたのは12:30頃だった。連休中ということもあり、人でごった返していたがアルペンルートはスムーズに乗車できた。3日間晴天に恵まれ、最高の時間を過ごせたことは、一生忘れないだろう。みなさんありがとう。

最後に剣御前からの剱岳を心に刻み、北アルプスを後にした。